農家の声/米価下落・TPP参加(長文ですみません)
農家に不安広がる/米価下落、戸別所得、EPA【日本農業新聞 10/19】
大転換期の農政に、生産者から不安の声が上がっている。2011年度からの戸別所得補償制度の本格実施を前に、深刻な過剰問題から米価下落に歯止めがかからない。追い打ちを掛けるように、貿易自由化を進めようとする動きまでも出てきたからだ。生産現場の声を聞いた。
秋田県北秋田市で水稲15ヘクタールを経営する松岡秀樹さん(34)は「米価を維持しなければ、水田農業が成り立たなくなる」と早急に需給環境を改善するよう訴える。同県の今年産は作況指数(9月15日現在)「94」。収量、品質とも悪く、農家が集まれば「つなぎ資金をどうするか」という話題ばかりが上る。大規模農家ほど苦しい状況にある。
「米価下落は農家の営農意欲を奪う。米で生きていく覚悟があっても、将来は不安だらけ。自給率向上をうたっておきながら、相反する自由化路線などあり得ない議論だ」と憤慨する。
新潟県上越市で米100ヘクタール、大豆と野菜を20ヘクタール栽培する県内最大の農事組合法人・大潟ナショナルカントリー代表の竹田香苗さん(62)は「民主党は政権公約で政府備蓄米300万トンを示しており、それを守るべきだ。現在の過剰米を備蓄として買い入れるのが妥当だ」と主張する。戸別所得補償の導入で過剰作付けは減ると政府が説明してきたにもかかわらず、4万ヘクタールの過剰作付けが発生した現実もあるからだ。
三重県伊勢市で水稲1・1ヘクタールと果樹90アールの複合経営農家、野口佳子さん(69)は「自由化されれば、農家は生活できなくなる」と不安視する。1993年の外国産米輸入で国内市場が混乱した記憶から、「自由化になったら、どうなるか恐ろしい。絶対に認められない」と強調する。
滋賀県長浜市で水稲、ブルーベリーなど40ヘクタールを経営する農事組合法人・夢ファームせんだの野田藤雄組合長は「米価が既に前年より1000円(60キロ)下がっている」と危機感を示す。経営努力で昨年度は純利益を出したが、この低米価で今年度は決算が見通せない。新米が安値定着しないよう、国に需給・価格の安定対策を求める。
中山間地の島根県吉賀町。ここで水稲や麦、大豆、ソバを24ヘクタール経営する(有)サジキアグリサービスの茅原忠夫代表は「目まぐるしく変わる国の制度に、不安や不信のムードが漂っている」ともらす。高齢化に伴い、管理を任される農地が後を絶たないだけに「経営を守るには十分な運転資金が必要だ」と国の支援を要望する。
鹿児島県曽於市で露地野菜15ヘクタールを栽培する吉川和敏さん(46)は、自由貿易促進へかじを切ろうとする政府に「畜産や野菜など農業が大打撃を被る。食料安全保障が担保されなければ、消費者の不信を買う」と反発する。戸別所得補償も「自由化に伴う農家への応急手当てでは困る。自給率向上や農家所得確保を前提に、議論を尽くすべきだ」と訴える。
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自給率向上どこへ/TPP検討に不安渦巻く農家 北海道【日本農業新聞 10/19】
関税撤廃を原則とし、米国やオーストラリアなど農産物輸出国も参加を表明した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)。菅直人首相が1日の所信表明演説で「参加を検討する」と述べ、閣僚からも積極的な声が相次ぐ。「農業大国相手に同じ条件で競争したら勝ち目はない」「一度交渉に入ったら抜けられないのではないか」――。日本の“食料基地”北海道にも、不安が渦巻いている。
・経営に打撃必至
十勝平野にある上士幌町で、小麦やジャガイモ、テンサイ、野菜など計50ヘクタールを経営する西原正行さん(46)は、「経済を支えるためには貿易の促進も重要だとは思っている。でも、農産物の関税を撤廃したら自分の生活はどうなるのか。まったく見えない」と言う。
来年度は畑作でも戸別所得補償制度が始まる。ただ、現対策からの交付額の変動を緩和する「産地資金」がどの程度、畑作農家に配分されるかはいまだ不透明だ。西原さんは「来年度の経営さえ不安は残る。戸別所得補償があれば、国境措置なしでも営農を継続できるとは思えない」と表情を曇らす。
道は2006年、オーストラリアとの経済連携協定(EPA)の締結で主要農産品の関税を撤廃した場合、道内総生産の4・2%に上る1兆3716億円の打撃を受けるとの試算をまとめた。関税撤廃に伴う必要財源を国が確保できない場合、小麦やテンサイ、乳用種牛肉、乳製品向け生乳の生産は全滅。影響はと畜場や製糖工場、運輸や商店など、地域社会そのものに及ぶとした。
さらに道は、米国との間で関税を撤廃すれば、米をはじめ、でんぷん原料用のジャガイモ、豚肉でさえも壊滅的な打撃を受ける可能性があるとみる。
オーストラリアとのEPA交渉は両国が真っ向から対立し、実質的に暗礁に乗り上げている。道幹部は「TPPは複数国間の交渉。世界貿易機関(WTO)と同じで、交渉に入ってしまえば抜けることは困難ではないか」と、安易な参加表明を警戒する。
生乳生産日本一の市町村、別海町で酪農を営む臼井貴之さん(34)も「首相自身がTPPに触れたことが重い。農水省が慎重だという点が唯一の望み」と危機感を募らせる。
政府は3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画で、食料自給率目標をこれまでの45%から50%に引き上げた。政権を担う民主党は09年衆院選マニフェスト(政権公約)の基になった政策集で、「食料自給率は10年後に50%、20年後に60%達成を目標とする」ことを明記した。
内閣府が今月14日に公表した食料供給に関する世論調査では、自給率を「高めるべき」と感じている人が9割を超える。一方で、農水省が07年に行った試算では、日本が農産物の関税をすべて撤廃すれば食料自給率は12%に低下するという。
「せめて国内の半分は生産したい。その大きなかじ取りが政府の役目なはずだ」(JA上士幌町幹部)。自給率向上という政策目標とTPP参加検討を含むEPAの推進をどう両立させるのか。生産者は、政府が11月にも決めるEPA基本方針を、かたずをのんで見守っている。
TPP参加は日本の貿易・経済の成長にかかせないというのが政府の見解らしい。
(10月19日 産経新聞:前原外務大臣の発言)
農家が何に不安を抱いているのか。
ただコメが安くなったから大変だと騒いでいるのではない。(短期的にはそうかもしれないが)
TPP参加説明が「経済成長にかかせない」という漠然としたものだから。TPP参加の有利性がまったくわからないから(日本経済の閉塞感を打破するカンフル剤に成り得るのか)。
参加したからには国内の農業を維持しなければならないけど、戸別所得補償制度だけで参加後の国内農業の維持ができるとは思えない。
・
内閣府が行った世論調査で9割の人が「自給率を高めるべき」と回答している。
これが何を意味するのか。
みんな頭の中ではこのまま行けば将来的に食糧(料)危機になるのではというのがあると思う。何となくでも。
農業大国のロシアから小麦が入ってこない時もあったし。今後、ほかの農業大国でも十分考えられること。
だから、少なくとも食糧(料)はほかの国に頼らなくても日本国内でまかなえるようでなければならないと思う。
それがTPPに参加しても実現できるのであればそれに越したことはないけど。
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何でもかんでもチャイナ、アメリカのリンゴは何処に行った。
平安時代からの米作り、安いより食の安全が優先。
チャイナの長ネギ 硬くて、、テレビでの農薬、水をまく様に散布?
もっと自国の農業技術に誇りを持った方が良い
中国の人が何故家電は日本製に拘るのか、、、日本の農産物は世界一安全
何も無い島国だ米や野菜くらい自国の物を食べたい。
何も無いけれど技術は有る、、、世界一の
300円で毒を買うか3000円で美味しい米を買うか
多分皆、日本の風土に楢連れた米を買うと思う
投稿: 佳代 | 2010年11月14日 (日) 23時51分
佳代さんへ
コメントありがとうございます。
大変興味深く拝読しました。
日本の農産物の安心安全は世界のどの国と比べても
保障されていると思います。
私も有機・無農薬とまではいきませんが、減農薬栽培
で出荷しています。
TPPに参加するか否かについては来年6月には決まる
ようですが、結局は参加するのではと思っています。
個人的には特定の国とのFTAやEPAで十分だと思う
のですが。どうもTPPのようにアメリカなどの大国が入
ることで日本に不利だという印象があるので。
農業以外の産業でもこれら大国に押されてしまうような
感じがします。
私は現在米を主体としていますが、TPP参加を視野に
他の国と競合しない農作物の栽培などの農業経営を
模索しています。米も作付けを減らして、有機、無農薬
などの付加価値がある外国産米より高値でもお客さま
が買ってくれる米作りができればと考えています。
投稿: shiroken | 2010年11月15日 (月) 10時12分